パワーハラスメント防止措置が遂に中小企業でも義務化です

2020年6月1日より施行された「改正 労働施策総合推進法」で、大企業に関しましては義務化されていた「パワーハラスメント防止措置」(パワハラ防止措置)が、2022年4月1日より中小企業の事業主にも遂に義務化がスタートします。
それに合わせまして、新しいリーフレットも厚生労働省の方から出ております。

「2022年(令和4年)4月1日より、「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化されます!」
(厚生労働省ウェブサイトより)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000855268.pdf

正直なところ、この防止措置を中小企業がやっていくには結構な労力を要することになるため、対策に対して後回しになってしまう事も多いのではないかとは思いますが、問題が起こってから「やってませんでした」では通用しませんので、まだ時間のある今のうちに準備をお勧めいたします。

関係者の責務規程

そもそもなんですが、2020年6月にはパワーハラスメントだけではなく、セクシュアルハラスメント(セクハラ)や妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(マタハラ・パタハラ)に関しても義務化されたのは知っていますでしょうか? こちらは企業規模に関わらず施行されていたので、知っている、あるいは防止措置対策済みであれば、パワハラの防止措置も同様に対応することになるので、追加すればいいだけなので、問題は少ないのかと思っております。

「えっ! 何それ!」という中小企業の事業主様もいっらしゃると思いますが、その場合には今回のパワハラ防止措置を行う際に一緒まとめて早目の対策を行いましょう。

まず最初に、ハラスメントの防止のための原則として、「事業主及び労働者の責務」に努めることが明確化されております。

事業主および労働者の責務

簡単に言いますとハラスメントとは一人では成り立たない行為、必ず行為者と被害者があるものですので、事業主だけでなく労働者、すなわち従業員の皆様が取組に対して協力をしなければ防止はできないというところから責務が定められているものだと思います。

また、責務規程に関しまして、セクハラには「自社の労働者が他社の労働者にセクシュアルハラスメントを行った場合の協力対応」に努めることも必要となります。

必ず講じなければならない措置

で、今回のメインとなります「職場におけるパワーハラスメントを防止するための措置」としては、具体的には以下の4つの措置を行う事が義務化されます。

職場におけるパワーハラスメントを防止するために講ずべき措置

セクハラ、 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント に関しましてもほぼ同じ内容ではございますが、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントに関しましては、この措置に加えまして、「職場における 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置」というものが追加されておりますので、ご注意ください。

事業主の方針等の明確化および周知・啓発

  • 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
  • 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること

簡単に言えば、決意表明ですよね。まずは第一歩目として就業規則や規程、周知用のポスターを作成するなど、社内に対して企業としてハラスメントは許さないという事を示すという事になります。
また、周知や啓発に関しては決まりを作って終わりという事ではなく、継続的に研修などを行う事がハラスメント発生の防止には効果的ではあります。

相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

  • 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
  • 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

相談窓口を作り、その窓口を従業員に周知する必要があります。
周知用のポスターなどに、窓口のメールアドレスや電話番号などを記載しておくことが必要です。その他社内で使用しているグループウェアの掲示板などに記載する等、すべての従業員が分かるように周知をする必要があります。

職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

  • 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
  • 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
  • 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
  • 再発防止に向けた措置を講ずること

先ほどの窓口対応と併せて迅速かつ適切に対応できる体制の整備が必要となります。
間違った対応をすれば大事にもなりかねませんので、場当たり的な対応をするのではなく、事前に対応方法をマニュアルにまとめておく等準備が必要です。

併せて講ずべき措置

  • 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること
  • 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

当然ではありますが、プライバシーや不利益な取り扱いがあっては、ハラスメント対策の意味がありませんので、企業としてもこの点を十分に留意して措置を講じることになります。

ハラスメント防止措置って必要なんですか?

もっとも、ハラスメント防止措置をやる事って必要なんですか? と考えるのも不思議ではありません。
「そんなことは大企業だけの話ではないのか?」と義務化されたにもかかわらず対応を後回しにしていると企業にとって大きな問題を引き起こしかねません。

以前はハラスメントが発生したとしても社内から漏れることはありませんでした。ところが、現在ではSNSユーザーの増加により、被害者が一言書き込みをすればあっという間に拡散してしまいます。
どのぐらいSNSが普及しているかを見てみますと、前年代で「LINE」は約90%、「Twitter」はや約42%、「Facebook」は約31%となっている普及率を見れば「あっという間に」という言葉が嘘ではないことが分かります。

ソーシャルメディア系サービス・アプリの利用率

ハラスメントの発生が企業の信用を悪化させるだけでなく、経営にも大きく影響を受けてしまう事になってしまう事にもなりかねません。
十分に対策をすることをお勧めいたします。

ここまで書いてきましたが……まとめ。

とまぁ、ここまでは書いてきましたが、正直、中小企業でも人数が比較的多いところであれば、措置を講じることも出来るかとは思いますが、人数の少ない、例えば20人ぐらい、あるいは10人程度の企業で同じことができるのか? というとハードルどころか走高跳ぐらいの高さではないかと……。

しかしながら今回の措置を講じることは義務ですので、適当にしておくことも、場当たり的に対応することも出来ません。個人的には人数が少ない企業様は相談窓口を外部に委託、例えば、顧問の弁護士や社会保険労務士の先生などに委託し、外部相談窓口と事業主様が連携をすることにより、事後の対応を行う事が現実的ではないかと思います。
もし、顧問の弁護士や社会保険労務士の先生がいる場合には、相談することをお勧めいたします。

何よりも大事なことは、ハラスメントを起こさない企業体質を作ることです。
ハラスメントが発生した場合には、企業としても非常に大きな体力を使う事になります。そうならないためにも、従業員の小さな変化を事業主様自らが感じ取れるよう十分なコミュニケーションをとることをお勧めいたします。

なお、個人的な考えではありますが「note」にて、ハラスメント対策で注意すべきポイントの記事を書いております。こちらも併せて見ていただけますと幸いです。

【2022年4月~義務化】中小企業のハラスメント対策での注意すべきポイント。
https://note.com/151sr/n/nf49e32671d8a

ハラスメント対策や研修のご相談は……

当オフィスでもハラスメント対策や研修などの業務を行っております。
中小企業様で、顧問の先生がいらっしゃらない場合など、初回相談料は無料ですので、先ずはお気軽にご相談ください。

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