育児・介護休業法改正の資料が着々と準備されています

当オフィスのウェブサイト内でも何度か取り上げております、育児・介護休業法の改正についてですが、2021年11月30日の時点にて、「令和3年改正育児・介護休業法に関するQ&A」も公開され、内容がずいぶんと整理されてきました。

育児・介護休業法の改正については以下投稿にもあります。

育児・介護休業法改正ポイントの内容が更新されております。
https://151sr.com/20211014-01/

男性の育児休業取得。実際に育児休業を5か月間取得した私が書いてみる。
https://151sr.com/20211029-01/

厚生労働省より育児・介護休業法改正にて「規則の規定例」、「事業主向け説明資料」が公開されております。
https://151sr.com/20211105-01/

育児・介護休業法に関しては、結構改正が行われておりますので、今後も改正がされるのだろうとは思います。今後に関しては要介護者の数が700万人近くとなった状況において、介護休業に対する改正も行われてくるのだろうとは思いますが、今回は育児休業に関する改正がメインになりますので、企業の体制の整備や就業規則の改定、労使協定の締結など、改正される点に関しましては準備を進めていきましょう。

育児・介護休業法の改正の5つのポイント

今回の育児・介護休業法の大きなポイントは「男性の育児休業取得促進」にあります。
少子高齢化、生産年齢人口の減少など、今後日本が迎える大きな問題に対して、男女ともに仕事と育児の両立支援制度を利用しやすくすることが必要となっておりましたが、特に中小企業においては代替要員の確保が難しいこともあり、制度の整備・周知がされていないことが多いのが現状ではありました。

そこで、今回の改正では、大きく5つのポイントを挙げております。

改正育児介護休業法の5つのポイント

ここで、事業主様に注意していただきたいのが「会社にそんな規則はない」といって、育児休業を取得させないようにしてしまうこと。今時、そんな事業主様も少ないとは思いますが、会社に規則が無くとも要件を満たせば法律に基づいて取得が出来ますので、もし、取得をさせないように頑張ったとしても、リスクを増大させるだけで、残念ながらその頑張りが報われることはありません。
経営においては、ただでさえ効率化を進めているにも関わらず大変な事とは思いますが、助成金などを活用して、少しでも穴埋めが出来る形を探すことを考えていただくのがベストな手段と思われます。

それでは個々のポイントについて解説をいたします。

1・雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備

育児休業と産後パパ育休の申出がし易いように、事業主は以下の中から、いずれかの措置を講じなければならなくなります。
内容的には読んで字のごとくでそれほど難しい内容ではありませんが、リーフレットやQ&Aを見ても、このいずれかの項目の複数を講じることが望ましいとしております。

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備の内容

社内でポスターなどを作って、事業主としての方針を貼ったり、社内が総務窓口となった上で、年1回程度、社内で研修を行う等、出来ることを行う事で問題は無いかと思いますが注意点を少し。

育児期の社員がいない、また、採用する予定も無いので雇用環境の整備は必要ないか?

だから、「うちには関係ない!」と思われている事業主様もいらっしゃると思いますが、育児休業の申出対象となる子には「養子縁組等」も含まれるため、幅広い年齢層が対象となる可能性があること、また、法律上、義務対象の事業主を限定していないため、全ての事業主が対応する必要になります。

相談窓口は形式的に設けるだけではダメ

ただ単に「設けました」ではなく、実質的な対応が可能なもので、相談対応者を置き、窓口の周知等により、労働者が利用しやすい体制を整備しておくことが必要となります。

妊娠 ・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置

本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に、育児休業制度に関する事項の周知と休業の取得意向の確認を個別に行わなければならなくなります。
なお、周知する事項以下の図の内容となりますが、注意が必要なとことがいくつかあります。

育児休業周知方法と個別周知の確認方法

「育休を取得するつもりがないので制度周知は不要!」という人に対して

そんな事を言う人もいるでしょう……多分。
このように、周知や意向確認の措置が不要であるという意思表示をした場合であっても、困ったことに当該労働者に対して事業主は措置を講じる必要があります。そんなことをいう人がいたとしても、時間をみてきちんと説明をしましょう。

在宅勤務なので周知は電話で行った

周知の方法は「面談」・「書面交付」・「FAX」・「電子メール等」となっておりますが、この中に「電話」ってないですよね。そうなんですオンラインでの面談は可能ですが、「電話」のように「音声のみの通話」は面談には含まれないということになっております。また「面談」による場合、特に記録を残すことは必要とはなっておりませんが、できるならば面談の時には必要に応じて記録を作成するか、書面を一緒に渡す等の方法を考えましょう……だったら書面交付でイイじゃん! って話ではありますが……。

取得を控えさえるような言動に注意!

例えば良くありがちな「出世できなくなるよ」などの不利益をほのめかしたり、「今まで取得し人はいない!」と制度に対して強調をしたり、直接的に「取得するなよ!」なんて、取得を控えさせるような形での個別周知と意向確認は措置を行ったとは認められません。
更に、仮に取得を控えさせるような言動のあった後に、改めて個別の周知と意向確認が行われた場合であっても、既に行った取得を控えさせる言動を含めて、その措置全体として取得を控えさせる効果を持つ場合には措置を行ったものとは認められないことになっています。

意向確認時に「育児休業を取得するつもりは無い」と回答があったのに育児休業の申請がきた

このパターンって2つのパターンがあると思います。

1つ目が先に書きました意向確認の際に取得を控えさせる言動があり、その時は取得しないと言ったがその後に取得を申出た場合、2つ目が意向確認時は本当に取得するつもりは無かったけど、色々な事情から取得を申出た場合とあると思います。

しかしながら、どちらの場合であっても、労働者は法に基づき育児休業の申出を行う事ができ、事業主はその育児休業の申出を拒むことはできないことになっています。
まぁ、これは1つ目のパターンを無くすための事なんだろうなぁ……と思うところです。

2・有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が緩和され、現行制度にある「引き続き雇用された期間が1年以上」という要件が撤廃されます。その改正に合わせて、育児休業給付、介護休業給付の受給資格についても緩和されます。

有期雇用労働者の育児介護休業の取得要件緩和

有期雇用の従業員の要件が正社員の従業員と同様になったという事なのですが、こちらの注意点は就業規則の変更を伴う場合がありますので要注意です。

厚生労働省のが出している令和3年1月1日施行対応版の育児・介護休業等に関する規則のモデルでは以下のようになっております。

育児のために休業することを希望する従業員(日雇従業員を除く)であって、1歳に満たない子と同居し、養育する者は、申出により、育児休業をすることができる。ただし、有期契約従業員にあっては、申出時点において、次のいずれにも該当する者に限り、育児休業をすることができる。
一 入社1年以上であること
二 子が1歳6か月(4の申出にあっては2歳)になるまでに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと

厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし 令和3年1月1日施行対応版」より

したがって、今回の改正により「一 入社1年以上であること」の規程内容を削除する必要があります。
ただし、図にも記載をしておりますが、従来の正社員と同様、労使協定にて対象を除外する必要がありますので、その部分も含めて対応をすることが必要です。
また、以前より有期・無期を問わない形にて除外した労使協定を締結していた場合であっても、今回の改正にて1年未満の有期雇用の労働者に新たに育児休業の申出をする権利が付与されたことから、改めて有期雇用労働者を含めた労使協定の締結が必要となります。

3・産後パパ育休(出生時育児休業)の創設、4・育児休業の分割取得

今回の目玉?とも言える、産後パパ育休制度が創設されます。また、育児休業に関しても分割取得が可能になるなど柔軟化されます。ここでは、リーフレットと同じく、産後パパ育休と育児休業の分割取得をまとめて表にしてます。

現行の制度である「パパ休暇」の制度は産後パパ育休が始まることで2022年9月30日で終了となりますので、就業規則の「パパ休暇」の個所を「産後パパ育休」の内容に置き換える必要がありますので注意してください。

産後パパ育休、育児休業分割取得

ここでの注意点ですが、

産後パパ育休は育休とは別に取得が可能です。

育児休業を8週間以内に4週間まで取得できる制度ではなく、育児休業は別で取得できることになります。
つまり、8週間以内の期間は選択により産後パパ育休か育児休業のどちらかを取得できるという事になります。

雇用環境の整備などについて、法を上回る取組を労使協定で定めている場合とは?

法を上回る内容の具体的な環境等の整備措置は以下の通りとなります。
実際に取組を行うにはこの内容について内容を確認する必要がありますので注意して下さい。

  1. 次にあげる措置のうち、2以上の措置を講じること
    • 雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施
    • 育児休業に関する相談体制の整備
    • 雇用する労働者の育児休業の取得に関する事例の収集及び当該事例の提供
    • 雇用する労働者に対する育児休業に関する制度及び育児休業の取得促進に関する方針の周知
    • 育児休業申出をした労働者の育児休業の取得が円滑に行われるようにする多恵の業務の配分または人員の配置に係る必要な措置
  2. 育児休業の取得に関する定量的な目標を設定し、育児休業の取得促進に関する方針を周知すること
  3. 育児休業申出に係る当該労働者の意向を確認するための措置を講じた上で、その意向を把握するための取組を行うこと

休業中の就業について

休業中の就業は労使協定にて締結している場合に限り、労働者と合意した範囲内で事前に調整をしたうえで可能とするものとなっています。

  • 労働者が就業してもよい場合は、事業主にその条件を申出
  • 事業主は、労働者が申出た条件の範囲内で候補日・時間を提示(候補日等がない、就業させることを希望しない場合はその旨)
  • 労働者が同意
  • 事業主が通知

という流れで手続きをしていきます。

就業可能時間には上限があり、

  • 休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
  • 休業開始・終了予定日を就業日とする場合は当該日の当該日の所定労働時間数未満

という条件になっておりますので、実際の運用時には注意してください。

産後パパ育休は男性のみか?

産後”パパ”育休と書かれてはおりますし、産後パパ育休の対象期間である子の出生後8週間以内は出産した女性は通常は産後休業期間中となるため、なんとなく男性のみかと思いますが、女性であっても養子の場合には取得することが可能となります。

分割取得の申出

産後パパ育休と、通常の育児休業とで分割取得時の申出に違いがあります。
産後パパ育休を分割取得する場合には、初回の産後パパ育休の申出の際にまとめて申出をすることが原則となっています。そのためまとめて申出をしていない場合には、事業主は2回目の産後パパ育休の申出を拒むことができます。当然、拒まないこともOKですので、その点は企業ごとの対応になってきます。

なお、通常の育児休業の場合は2回に分けて分割取得する場合、まとめて申出する必要はなく、取得の際にそれぞれ申出をすることになりますのでその点はお間違え無く。

産後パパ育休や育児休業について2回に分割して取得する場合は、各申出について繰り上げ(出産予定日前に子が出生した場合等)を1回、繰り下げ(事由を問わない)を1回ずつすることができます。

5・育児休業取得状況の公表の義務化

これは従業員数が1000人超の企業の場合で、2023年4月1日より義務化されます。
公表の内容は、男性の「育児休業取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」となります。取得率の算定期間は公表を行う日の属する事業年度(会計年度)の直前の事業年度で、インターネット等、一般の人が閲覧できる方法で以下のいずれかの割合を公表する必要があります。

育児休業取得状況の公表の義務化

資料

育児・介護休業法について
(厚生労働省ウェブサイトより)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

育児・介護休業法に関する就業規則作成や社内研修を承ります。

非常に長くなりましたが読んでいただきありがとうございます。

当オフィスでは、2022年4月より段階的に施行される育児・介護休業法の 就業規則作成や社内向け研修など承っております。
検討をしている企業・団体などがございましたら是非お問い合わせください。
また、育児・介護休業法に関しての就業規則の見直しなどもお問い合わせください!

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