「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が公表されております。

2022年7月1日、厚生労働省のウェブサイトにて「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が公表されました。

「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します

(厚生労働省ウェブサイトより)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00108.html

「個別労働紛争解決制度」とは、従業員と事業主との間で、労働条件や職場環境などのトラブルの未然の防止、解決を図るための制度で、「総合労働相談」・「助言・指導」・「あっせん」の3つの方法からなっているのですが、今回公表されている内容というのは、それぞれの方法において「どれだけ利用されているのか?」という統計です。

事業主様におきましてはこの「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を見ることによって、「民事上の個別労働紛争」、つまり、従業員と会社とのトラブルとして何が問題になりやすいのか? という事が分かるわけです。

総合労働相談コーナーに寄せられた相談件数は減少……しかし!

「総合労働相談コーナー」とは職場のトラブルに関するご相談や、解決のための情報提供をワンストップで行うために、各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内に設置されている相談窓口です。

そもそもなんですが、従業員が会社との間でトラブルになった際に「労基署に駆け込んでやる!」な~んてことが有ったりしますが、本来、労働基準監督署は「労働基準関係法令」に関わるところの相談や監督指導をするところであります。これが労基署への相談が分かりにくいところ。
そのため、「労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争」となる「民事上の個別労働紛争」に関しては総合労働相談コーナーにて相談をすることとなります。

総合労働相談コーナーのご案内

(厚生労働省ウェブサイトより)
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html

……で、 令和3年度に総合労働相談コーナーに寄せられた相談件数は「124万2579件」で前年度比で「3.7%減」となったそうです。(※令和2年度は「129万0782件)

「ほ~~、そりゃ平和になったんだねぇ~~!」

……と思われるかもしれませんが、民事上の個別労働紛争の中で「いじめ・嫌がらせ」に関しては「8.6%増」となっており、いわゆる「ハラスメント」に関する相談件数は非常に増えているのです。

「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は断トツのトップ!

今回の統計を見ますと、「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は断トツトップの「86,034件」これは2位である「自己都合退職」の40,501件の2倍以上です。
統計で出ている平成24年から1位をキープ。10年連続1位となりました。
なお、平成23年度の1位は「解雇」の問題です。

それだけ「いじめ・嫌がらせ」つまり「ハラスメント」の問題を、今までは「指導」として捉えられていたのが受け手側の変化により問題として捉えられているようになったのかなぁ……というように私個人は思っております。また、本来はそれがハラスメントにあたらないと思われる「指導」であったとしても、受け手側の感覚により「ハラスメント」として捉えられてしまうという相談もあるのかな? と思ったりします。

「ハラスメント」に関しては以下にも投稿をしております

【2022年4月1日~】「パワーハラスメント防止措置」が中小企業でも義務化されます!
https://151sr.com/20211220-02/

なお、2位である「自己都合退職」の問題ですが、自己都合退職ではないのに自己都合退職とされてしまうということが含まれます。社会保険労務士として仕事をしていると結構聞く話です。

「人の振り見て我が振り直せ」ってことですかね?

今回の統計を、身近に感じるか、遠目で見ているか、事業主様、管理職の皆様、それぞれにおいて状況は違うと思いますが、トラブルの根源というのは、そもそものルール作りであったり、コミュニケーションの問題であったりと、結局は職場環境に関わるところです。
そのようなトラブルの温床を未然に防ぐためにも、実際にこのような統計で見て、「人の振り見て我が振り直せ」ではないですが、従業員とのトラブルのトレンド、そして、自社内でそのような問題が出る状態ではないのか?という事を改めて考えていただく必要があるのではと思います。

「とは言っても、色々面倒だなぁ~~」

なんて思われましたら、色々な問題を抱え、本業に影響が出る前に、私を含め、お近くの社会保険労務士(社労士)にご相談するのも一つの方法ですので、是非ご活用いただければと思います。